どうモー、うしコラムです。
昨年のブログからだいぶ時間が経過してしまいましたが、繁殖成功への悪戦苦闘はまだまだ(まーだーまーだー)続く!
ちょっと復習(?)しますと、
- 牛の繁殖では人工的に精液や受精卵を子宮に届けるということをやっていて、それをやるには手探りで細い棒を竹輪の穴に通すようなことをしなければならず、これが大層難しい!(これが「竹輪の穴通し」#23を見てね!)
- 「竹輪の穴通し」ができるようになっても、なかなか受胎しない…(´;ω;`)
という話が前回まで。
さて、「竹輪の穴通し」ができるようになったので、とにかく数打てとばかりに人工授精&受精卵移植の毎日。
「あたれぇぇぇ!」というSF映画さながらのセリフを心の中で叫びながらの仕事です。
しかし難しいのはそれだけでなくて、その種付け(人工授精や受精卵移植のこと)がうまくいったかどうかの答え合わせ、つまり妊娠鑑定も結構難しいのです。
そこで出てくるのが子宮をひっくり返す「奥義・子宮返し」(ブログ#19も見てね!)。子宮を全体的に触診するための技術です。
「…老師!『子宮返し』ができません…!(涙)」
「…そなた、何を悩んでおる?」
「どうしても…どうしても子宮間膜がつかめないのです!否、ひっくり返ったと思ったら腸の蠕動運動が全てを戻していってしまうのです!」
「ふむ…よいか、その場に感じられるものが全てではない。真理は時に、壁の奥にある」
※☝作業中の脳内イメージです。ちなみに私の師匠は私より年下です。老師とか言ってごめん。
上は何を言っているのかというと、牛の子宮はチョキのような二股になっていて、その二股の間に水かきのような膜がついている(これが子宮間膜)。それをつかんで引っ張れば子宮返しができるのですが、その膜がつかめないので苦労しているというわけです。
頭を抱えながら今日も妊娠鑑定にトライ。私が人工授精した牛です。牛の直腸に手を突っ込んで探るも…
分からん、子宮間膜どこだ?わからん…くそぉぉぉぉ!!
と、破れかぶれでグイっと力を入れて手を押し込んでみると…
「真理は時に、壁の奥にある」
何かある!いつも触っている部分よりもっと奥に、ぴんと張った膜のようなものがあり、それに指をひっかけてぐっと引く…
「回れぇぇぇぇ!!」
ぐりんっ!!
子宮がひっくり返る。子宮の奥の部分まで触診できる。
やった、今だ、確認!結果は…何かある!
「これ、もしかして?」と師匠に確認してもらいますと。
「…うん、正解。おめでとう」
受胎。
とうとう、命を宿すことができた瞬間でした。
なお、この師匠、私が人工授精と妊娠鑑定ができたことを見届けると、これにて終了とばかりに農場を退職されました。
後は自分で克服せよと。
この後私は更に壁にぶつかって頭を抱えることになるのですが、その話はまたいずれ。