どうモー、うしコラムです。
先日、牛の蹴りが我が身をかすり、痛い思いをしました。あれはモロに入ったらタダじゃ済まんなぁと、冷や汗とともに実感。
ところで「ウシの動物学」(遠藤秀紀著、東京大学出版会)という本には「牛は草原の覇者」という言葉があります。
家畜化した現在の牛でもそのキックは侮れない破壊力を持ちますが、アフリカに棲む水牛などの野生の牛の仲間となると、実はライオンでも仕留めるのはかなり命がけ。
しかしもっとすごいのは、牛の「逃げる能力」なのだそうで。
牛は横についた眼でほぼ全方位見渡せる視野を持ち、近づく動物から巧みに距離を取ります。その足はネコ科のような戦闘力のある爪を持たず、代わりに走ることを重視した蹄を装備。しかもそれを肢1本につき指2本(そう、実はあの足先は「指」なんです)に絞り込むことによって、手を動かすなどの余計な筋肉は付けず、とにかく走る筋肉に特化。とはいえ角もあるし蹄は固くてキック力もあるので、いよいよとなったら戦うことも可能です。
しかし牛は戦う前にまず逃げる。牛を捕まえるのって、ホント大変なんです。ライオンも相当辟易していることでしょう。こうして牛の仲間は多くの地域で生存に成功、覇者たる地位を獲得したのです。
ちなみに、もうひとつ、「草原の支配者」という意味の名を戴く動物がいるのですが、ご存じですか?
答えは「カピバラ」です。(インディオの言葉でカピバラ=草原の支配者)
実はカピバラも戦うことはほとんどせず、嫌なことをされたら逃げる、ひたすら逃げるという戦略をとっています。
無益な争いはせず、しなやかに逃げるのが覇者への道なのか…と思いながら、逃げ回る覇者様に今日も振り回されるのでした。
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