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#75 特別な29日

どうモー、うしコラムです。

 

今年はうるう年。4年ぶりに、2月に29日がやってきます。

そう、29日、に(2)く(9)の日…

というわけで、「4年ぶりの肉の日じゃー!!」とお肉業界は盛り上がっているようです。

 

京都府の調べによると、前回のうるう年・2020年2月の牛肉消費動向を見ると、2月9日と2月29日に牛肉の消費が大きく伸びていたとのこと(出典はコチラです!)。

めで「たい」ことがあれば鯛を食べるようなダジャレ食文化の日本。数字のゴロ合わせが消費に与える影響力は計り知れません。

 

例えば毎月22日はショートケーキの日。カレンダーを見ると22日の上には必ず15(いちご)日が乗っているから。

なんてことない毎日だけど、ちょっと見方を変えると、何かにとって特別な日だったりすることを感じさせてくれます。

 

2月29日も、「そうか、今年は1日多いんだ」で終わってしまいそうですが、それをきっかけにちょっと特別感のある食卓にできそうです。

私たちのお肉も、そんな今日のお供になれたらと思います。

 






#74 牛獣医の修行日記 妖怪四変その3

どうモー、うしコラムです。

さて、妖怪四変との対決録、続きます。

 

新兵器登場!

ガスの溜まった4胃を確認し、このガス抜きは骨が折れそうだと思ったその時。

先輩獣医はある道具を取り出したのです。

そう、ビーチとかで大活躍のあれです。

 

私「これは…」

先輩「見ての通り、ポンプだ」

私「空気を入れてどうするんです!?」

先輩「心配するな、このポンプは空気を抜くこともできるのだ!」

何という優れモノ!

 

ちなみに外科の教科書には「チューブを取り付けた針を4胃に突き刺し、4胃を圧迫してガスを抜く」的なことが書かれています。この方法は結構時間がかかって大変なのですが。

 

私「4胃に針…刺しました!」

先輩「ほいきた!」

とポンプを上下させる先輩獣医。するとどうでしょう、みるみる4胃がしぼんでいくではありませんか!

私「これは気持ちいいっすね…」

先輩「なんせ早いからおススメだ」

みなさんも胃にガスがたまった時はぜひ使っΣ\( ̄ー ̄;)

 

もとい、こうして首尾よくガスを抜き、なんとか4胃を所定の位置に確保(実はこの確保が一番難しいのですが)。腹壁に固定後、閉腹して手術は無事完了となったのです。

 

秋の4変祭り開催

じゃあ次からは自分でやるように。

そんなことを言われてその場は終わり、手術した牛も一命をとりとめたわけですが、手術はそう簡単に覚えられるものでもありません。

 

家に帰っても今日やった手技の言語化、イメージトレーニング、関連文献の入手。

そして牧場で死亡牛が出たときは、それを使わせていただき、模擬手術。

そしてアマゾンでポンプを買う。(牧場に費用申請、「医療用具です」と言い張った)

とにかく技術を覚えるためにやれることは何でもやります。

 

と、1頭あやしげな牛が出る。餌を食べない。

打診すると金属音。出たな、妖怪四変。

おっかなびっくり一人で立ち向かい、何とか退治に成功したのでした。

 

しかしそれが合図だったのか、

「先生、牛が餌食べません!」

 

翌週また

「先生、今度は別の牛が(以下同文)」

 

毎週のように出るわ出るわ。2か月間で8頭は出たでしょうか。

さすがに青ざめる秋の4変祭りでした。

 

どうにかこうにか手術もやり切りまして、何かさみしげに形容される「祭りの後」は、言い知れぬ達成感と、もう暫く勘弁してくださいという満腹感でいっぱいになりましたとさ。






#73 同じ方向を見て

どうモー、うしコラムです。

2月3日は節分でしたね!

皆さん、豆まきして恵方巻を食べましたか?

 

恵方巻は、その年の良い方角である恵方を向いて、喋らずに黙々と食べます(喋ると運が逃げちゃうんだって!)。

恵方は「東北東」「西南西」「南南東」「北北西」の4つしかなく、2024年は東北東でした。

 

日本中の人々が同じ方向を向いて黙々と恵方巻を食べている…想像するだけで、なんだか面白いですね!

 

ところでこの「同じ方向むいちゃう」現象、どうやら日本人の間だけで起きているわけではないようで。

牛が向いている方向は…

皆さん想像してください、自由に放たれている多数の牛を。

 

さてこの牛たち、一体どの方向を向いているでしょうか?

 

2008年、Google Earthの衛星画像を使って308カ所、8510頭の牛を調査した結果、大半の牛が南北の方向を向いていることが分かった、という論文が発表されました。※

 

この論文で、牛には地磁気(地球の磁場)を認識する力があるのかもしれないと示唆されたのです。

 

ちなみに、渡り鳥や、繁殖のために産まれた場所に戻ってくるカメや鮭では既に、移動のために地磁気を利用していることが分かっていました。

 

それから、他の動物たちも続々と地磁気を認識する力を持つことが分かってきています。

 

しかし、地磁気を認識する力を持っていたとしても、牛がなぜ南北を向くのか、その理由までは分かっていないそうです。気になる!!

 

一致団結

「同じ方向を向く」という言葉には、「一致団結する」「同じ目標に向かって頑張る」などの意味があります。

 

牛もただのんびりと揃って南(又は北)を向いているだけではありません。時には「一致団結」して…

 

獣医の仕事の邪魔をします(笑)。

 

例えば1頭に注射しようとすると、後ろから帽子をカミカミ、牛を押さえている手をナメナメ。

噛みつき・くすぐり・頭突きと、多方向から同時多発的に多様な責め苦(?)を浴びせてくるのです。

 

牛の団結力は素晴らしいですよね。今日も奴らのヨダレでずぶ濡れ確定です(;^_^A

 

出典

※Sabine Begallら「Magnetic alignment in grazing and resting cattle and deer」2008年