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#129 秋の気配と生姜の香り

どうモー、うしコラムです。

このごろだいぶ涼しくなってきましたね。季節の変わり目で、体調の崩しやすい季節、どうぞご自愛ください。

牛の健康に関していうと、乳牛の場合は夏場、特に大腸菌による乳房炎が増えるのですが、秋が深まるにしたがってちょっとずつ減っていくんですね。獣医や牧場スタッフの間では

「最近大腸菌が取れなくなってきたな」

「もうそろそろ年末ですねー」

なんて牧場関係者しか分からない因果関係の会話をしていたりします。

 

さて、10月と言えば米どころ秋田県では「秋田米にぴったり!ごはんの友選手権」が行われる時期です。

ご飯のお供になるこれぞという逸品を決めるイベントで、昨年は10月7日に行われました

秋田でご飯のお供と言えば、前回もレシピで使った「いぶりがっこ」が強力な存在なのですが、昨年その牙城を破りグランプリに輝いたのは秋田県産生姜の佃煮「華しょうが(有限会社佐藤徳太郎商店)」でした。

秋田の新米、ほかほかごはんに生姜の組み合わせ、想像するだけでヨダレが垂れそうです。

 

生姜と言えば夏のイメージがあるかもしれませんが、実はハウス栽培でなければ今こそが収穫時期。初夏~夏場はハウス栽培で収穫してすぐの「新生姜」、秋以降は収穫から数か月寝かせた「根生姜」が流通することが多いようです。根生姜にするのは、水分を飛ばして冬場も使えるようにするため。血行促進作用などがある生姜は、冬場、私を温めるとてもありがたい存在になりますね。

 

実は牛も生姜を食べると胃の動きが活性化するといったことが起こるそうで、それを混ぜ込んだ飼料も販売されているようです。

秋田牛は秋田のお米を食べて育ちますから、もしかして生姜入り飼料とあわせると人間と同じように食が進んじゃったりするのかな…などと妄想が膨らんでしまいますね。

 

 

 






#128 簡単レシピ紹介! 絶品・いぶりがっこのステーキソース

どうモー、うしコラムです。

今回は秋田名物いぶりがっこを使った、簡単で絶品のステーキソースのレシピをご紹介します。

 

材料(2人分)

  • いぶりがっこ 40g
  • にんにく 1かけら
  • 日本酒 大さじ2~3
  • しょうゆ 大さじ2
  • みりん 大さじ1.5
  • バター 15g ※無塩・加塩はお好みで

作り方

  • いぶりがっことにんにくは、みじん切りにしておきます。
  • 材料を必要な分用意したら、ステーキ肉を焼き始めます。
  • ステーキを焼いた後のフライパンに、バター以外の材料を入れて火を通します。
  • アルコールが飛んだら仕上げにバターを入れて、少しとろみがついたらできあがり。

以上です。すごく簡単ですよ!

 

論より証拠、私も作ってみました。

使ったのは秋田牛のモモ肉です。

まずは材料を用意。みじん切りにしたいぶりがっこがコチラ。果たしてこれがどう化けるのか!?

まずとりあえず、ステーキを焼きます。ステーキの焼き方は過去ご紹介したレシピを参照(コチラ!)。

※ソースに塩味が十分あるので、肉本体には塩はつけなくてもいいかもしれません。

うちは電磁調理器しかないのですが、なんかイイ感じに焼けています。じゅーーーーっ。

焼き終わったら動画通りに、アルミホイルとタオルで包んで余熱処理。

さてここからです!

焼き終わったフライパンに材料を入れて火を通します。

私は煮立ってちょっと量が減ってきた時点でバターを投入。

少しとろみがついたら火を止めて完成。出来上がりがコチラ!じゃーーーん!

おいしそうでしょう!?いや実際、驚きのおいしさでした。

いぶりがっこって結構スモーキーなんですよ。だから一瞬スモークチーズかな?と思わせるのですが、噛むとたくあんのパリパリした食感が出てきます。それが秋田牛のやわらかさに程よいアクセントとなり、じゅわっと染み出る独特のスッキリした脂とも相性抜群!もう絶品です。

まさか自宅でこんなおいしいステーキを味わえるとは。

すごく簡単でしたので、皆さんも、是非お試しください!






#127 秋田のいぶりがっこ

どうモー、うしコラムです。

気が付けばもう9月も半ばなんですね。

秋田では来月ごろから大根の収穫が始まり、あれを作る季節がやって来ます。

 

そう、「いぶりがっこ」です。

 

いぶりがっこはもともと囲炉裏の煙でいぶして作る大根のお漬物。スモーキーな味わいが独特とされる、秋田では有名な食品のひとつです。

私は「漬物を燻製にするのかな」と思っていたのですが、順番は逆で、まず収穫した大根を燻し、それを糠や米麹などの漬け床で2~3か月かけて漬け込んで作るのだそうです。

ちなみに食品表示法的には「たくあん漬け」と表示されることになっていてたくあんの1種にカテゴライズされるのですが、この最初の乾燥工程が違うんですね。一般にたくあんは大根を天日干ししてから漬け込むのですが、秋田は日照時間が短い!ので、この方法が発達したわけです。

かまくらミートがある横手市は、このいぶりがっこの生産地としても有名なんですよ。

 

いぶりがっこはもちろんそのままでもおいしいのですが、秋田ではマヨネーズや、更にそれにブラックペッパーを和えたりして、ソースの材料に使うこともあります。いぶりがっこ入りのタルタルソースは地域の特産品にもなっていますね。そのまま食べるだけでなく、魚や肉料理のお供に活かされるなんて、面白いと思いませんか?

 

じつは先日、とある料理人の方から、いぶりがっこをつかったステーキソースをご紹介いただいたので、次回はそのレシピと作ってみての感想をお伝えしようと思います。お楽しみに!

 






#126 舐められるとダメージ大!牛タンについて

どうモー、うしコラムです。

朝夕、ちょっと涼しくなってきましたね。暑さが和らいだせいか、牛もちょっと活発になったような気がします。

気が付けば今年も今月を入れてあと4か月。早いものです。

 

さて皆さんは猫に体を舐められたことはあるでしょうか?

猫の舌は結構ざらざらしていて、舐められるとちょっと痛かったりしますね。

あれは舌乳頭(ぜつにゅうとう)とよばれる組織のひとつで、糸状乳頭というのですが、ネコ科動物だと歯では取り切れない肉片をこそぎ取って食べるのに役立っています。顕微鏡で見るととても尖った組織ですし、もともと捕まえた動物の筋肉を削り取るのが役割ですから、舐められたらそれは痛いわけです。

同じところを何度も舐められてヒリヒリして、「痛いなぁ、もう、こいつめっ」みたいなやり取りを猫とした人は多いのではないでしょうか。

 

では皆さんは牛に体を舐められたことはあるでしょうか?

ご経験のある方は共感していただけると思いますが、

めちゃくちゃ、とは言い過ぎまでも、予想以上に痛いです!

牛は好奇心旺盛で、気になったものは舐めて確認することもあり、私たち獣医も牛からよく「確認対象」にされてしまうんですよ。そうなると猫とのやり取りのようなほのぼのした対応をしている場合ではありません。

顕微鏡で見ると舌の表面には犬歯のように尖った組織がたくさん生えていて、これも草を絡め採って飲み込むのに役立っていると考えられています。

焼肉屋で出される牛タンからは表面がつるっとしていてイメージがつかないかもしれませんが、それもそのはず。実は牛タンは加工過程で、糸状乳頭のついている皮膚部分はきれいにカットしてしまうからなのです。

皮膚の部分は固いし、そんな針のようなものがびっしり生えているので口触りが悪くて美味しくないので、除去するわけですね。

牛タンは1頭から1~2kgぐらいしか取れない貴重な部位で、この皮剥ぎ(「筋引き」とも言うそうですが)が上手くいかないと商品価値が落ちるので、まるで寿司職人のような繊細な技を持った技術者が丁寧にカットしてくださっているんですよ。

 

ところで何故牛タンの話題を書いたかというと、9月10日が「牛タンの日」だったからなんですね。

9(きゅう)と10(テン)で「ギュウタン」ということで、「仙台牛たん振興会」によって、2018年に制定された日だそうです。

ちなみに今月で言うと9月16日が「牛とろの日」など、牛や肉に関する記念日はちょくちょく暦にちりばめられていて、コラムニストにとっては全く油断も隙もありません。






#125 牛と「塩」のはなし

どうモー、うしコラムです。

焼き肉の日(8月29日)のクーポンはご利用くださいましたか?

 

暑い季節は冷たくてつるっとのど越しの良いものを食べたくなりますが、スタミナをつけるには脂やたんぱく質も必要。そして消化管をいたわるためにも温かい食べ物を摂ることも重要ですね。そういう意味で「焼いたお肉を食べる」というのはおススメでして。

さて、料理を仕事になさっている方に「牛肉の美味しい食べ方は?」と伺ってみると、大抵、「塩で食べるのが一番でしょう!」という答えが返ってきます。塩はシンプルにして最強の調味料と言えるでしょう。

塩には「精製塩」「天然塩(海塩・岩塩)」「再生加工塩」といった種類があります。一般的な食卓塩は精製塩で、塩化ナトリウムの純度が高く、クセのない味が特徴です。しかし牛肉との相性を考えると、もう少し別の味わいのある塩を選びたいところ。

一般的には鉄分を多く含む天然塩が、ステーキとの相性抜群と言われていますね。やや赤みのかかった大きめの結晶の塩です。鉄分が多くなると酸化鉄の色がついて赤い結晶になり、甘みが感じられるようになるそうで。

実は筋肉組織では筋線維に沿って毛細血管が張り巡らされているので、血液の色がついてお肉は赤く見えるんですね。そして血液のメイン・赤血球の成分も鉄分を含むので、鉄同士、相性が良い組み合わせと言われているわけです。

特に秋田牛は米を食べて育ち、すっきりした脂が特徴の肉なので、まろやかなしょっぱさがよく合います。結晶の大きな塩を少し、肉片でくるんで食べてみると、柔らかい歯触りの後に肉汁がじゅわっと出てきて、それに溶け込むように旨味を含んだ塩味が重なって絶妙のハーモニーになりますよ!ぜひ試してみてください!

 

ところで、牛も塩を舐めて生活しているというのはご存じでしょうか?

牛舎にはよく鉱塩と呼ばれるブロック状の塩の塊が置いてあるんですよ。成分はいわゆる「塩」(塩化ナトリウム)だけでなく、マグネシウムなどのミネラルや、重曹を含んでいることもあります。与えている牧草だけでは賄いきれない成分もあるので、餌とは別に摂取できるようにしているわけです。

牛たちもなかなか必死の形相で舐めていたりするので、塩って牛にとってもおいしいのだろうか…と思いながらその様を眺めています。

 

 

 

 






#124 8月29日は「焼き肉の日」!(お得な情報アリ)

どうモー、うしコラムです。

子どもの頃は、お盆過ぎると夏休みもいよいよ終わるという感じがしていました。

しかし暑さはまだまだ続きますね、バテないように気を付けましょう!

 

焼き肉にぴったりの月!

バテないようにするには、適度に水分・塩分を補給することはもちろん、ガッツのつくものをしっかり食べることも大事。食欲のそそる薫りで箸の進む「焼き肉」は、夏を乗り切る定番料理ですね。

8月29日は8(や)2(に)9(く)の語呂から「焼き肉の日」となっています。1993年に全国焼肉協会によって制定されました。

それだけではありません。焼き肉の日を挟むかのように、8月18日は「米の日」(八・十・八を組み合わせると「米」の字になるから)、8月31日は「野菜の日」と、焼き肉の脇を固める鉄板の食材も記念日になっているではありませんか。

8月はまさに焼き肉のためにあるような月でした。

 

焼き肉のお供

焼き肉と言えば「焼き肉のたれ」。全国の醤油や味噌に地方独特の味わいがあるように、焼き肉のたれにも地方色が現れます。関東は醤油と焦がしニンニク&生姜ベース、中部の柑橘風味、九州の豆板醤入りホットなタレなど実に様々。

東北地方はどうかというと、冬が長く保存食としての発酵食品文化が発展したという背景もあってか、醤油ベースだけでなく味噌を使ったタレもよく使われています。ここ秋田県では、

  • 県産のリンゴを使ったもの
  • 秋田の牛の肉醤と魚醤をベースのもの
  • 味噌ベースのもの

などなど、様々な種類のタレが流通していますよ。

地方色豊かなタレで焼き肉を楽しむのも面白そうですね。ぜひ、秋田牛と一緒に、秋田ならではの味をご堪能ください!

 

ちなみに、「焼き肉の日」の対を成すかのように、「焼き肉のタレの日」というのも存在します。

正式名称は「晩餐館焼き肉のたれの日」で6月12日。日本食研ホールディングス株式会社が制定し、一般社団法人日本記念日協会により認定・登録されたそうです。

 

最後にこの記事を読んでいただいた方限定でお得な情報!!

8月29日の「焼肉の日」を記念して8月18日の「米の日」から8月31日の「野菜の日」まで当店のかまくらネットで使える30%オフクーポンを配布!

クーポンコードは「うしコラム0829」です

是非この機会に焼肉パーティはいかがでしょうか!

かまくらネット:https://kamakura-net.jp/






#123 8月といえばハチ!

どうモー、うしコラムです。

さて8月、夏真っ盛りですね。バテないようにご注意ください!?

 

皆さんは8月と言ったら何を思い浮かべるでしょうか?

「虫」を思い浮かべた方は、今日のテーマに近い!

実は8月って、蜂の活動が最も盛んになる季節なんですね。

牛舎にはよくハチの巣が作られてしまって従業員にとっては恐怖の対象となるのですが、牛とは意外と相性が良いようで。

体内に蜂の巣!?

牛って、実は体の中に蜂の巣を抱えているんですよ。

といっても本当の蜂の巣ではなくて、4つある胃袋のひとつ、第2胃のこと。

第2胃は内部の構造が六角格子状になっているので、その姿から「ハチノス」と呼ばれているんです。

ホルモンを食べる機会があったら、よーく観察してみてくださいね!

 

牛の角を刺す!?

海外のことわざに、

牛の角を蜂が刺す(A bee stung a horn of a cow.)

というのがあるのですが、これは「痛くもかゆくもない」という意味。蛙の面に水と同じですね。

確かに、蜂の針ぐらいではどうにもならないぐらい固いのが牛の角。蜂も、牛なんか刺しても仕方がないと思っているのか、蜂にとって脅威ではないことが分かっているのか、牛が蜂を指すなんて話は聞いたことがありません。

 

実は牛のガードマン!?

牛にとって厄介な昆虫はむしろハエ!サシバエという吸血昆虫が牛にとりついてストレスを与えるだけでなく、色々な病気も運んできてしまいます。今、牛業界で問題になっているランピースキン病もハエが運んでくる病気です。

そしてこのサシバエに寄生してやっつけてしまうというのが…そう、蜂なんですねーーー!

キャメロンコガネバチという蜂がサシバエの蛹に卵を植え付け、駆除に一役買ってくれるというわけです。

現在は殺虫剤を使わず自然に優しい駆虫法として注目されているんですよ。

 

以上、8月と言えばハチ、シャレもきいててよろしいことで、というお話でした。






#122 秋田竿燈まつりが始まります!

どうモー、うしコラムです。

 

8月の秋田と言えば秋田竿燈まつり。今年(2025年)は8月3日~6日に開催されます。(祭りに関する公式サイトはコチラ

AIに「牛が秋田竿燈まつりを盛り上げている様子を絵に描いて」と無茶振りしたらこうなりました。

決してこういう、牛が山車を引くようなお祭りではありませんが、しかし竿燈はこの絵のようなもの。

こんな巨大な竿燈を手のひらや額に乗せる迫力満点のバランス芸が見もののお祭りですね。大きいものだと、ひとつ50kgにも及ぶそうです。

提灯に火を灯す「夜本番」は夕方(18時50分)からですが、日中はこのバランス芸の競技会が行われるので、昼夜楽しめる1日になりますね。

公式サイトには実際の様子の動画が紹介されています。

そしてお祭りの楽しみといったら、やっぱり食べ物!

今年も「竿燈屋台村」や「ご当地グルメフェス」が行われます。

秋田牛が食べられるコーナーもあるので、ぜひ訪れてご賞味ください!

 

 






#121 見えないフェンス!?

どうモー、うしコラムです。

いよいよ夏本番ですね!

 

牛は暑さに弱いので、夏でも涼しい高原のある地域では、そこで放牧されることがあります。

日影が少ない山肌ではかえって暑さにやられてしまうことがあるので、夏の放牧は標高の高い地域の特権ですね。

 

さて、たくさんの牛を外で自由にさせていると、中には迷子になってしまう牛もいるのではないかと心配になります。そうでなくても、段差や窪地があれば滑落することもあって危険です。

 

大抵は柵で放牧地をぐるっと囲い、牛が一定の範囲から出られないようにするわけですが、その管理はとても大変。

牛は何しろ大きくて強い動物なので、柵を壊すぐらいのことはするかもしれませんし、野生のイノシシなどが突っ込んで壊すなんてこともあり得ますね。

かといって、広い土地でどこの柵が壊れているか人の目で見つけ出すのもなかなか難しいとしたものです。

 

なんとか柵を設置せずに牛の動きをコントロールできないか?

ということで海外で考え出されたのが、「バーチャルフェンシング」!。

これは牛にGPSを取り付け、牛が設定された地域を超えようとするとそれを感知。GPSには音や電気刺激を流す装置が付いていて、それが牛の動きを制限するという仕組み。すごい時代になったもんだ。

実装実験の様子などはYoutubeで見ることができます(一例がコチラ☟)。

はたして深い山の中で十分にネットが使えるのか!?といった問題や、確実性への不安もあってか、日本ではまだ普及していません。

しかし、こうした技術の進歩を通じて、人間にも牛にも環境にも負担が少ないやり方の着地点が見えたらいいなぁと思います。

 

ところで、秋田の男鹿、田沢湖あたりは避暑地としても有名です。ぜひお越しになって、涼みながら秋田牛をお楽しみください。(^^)/

 

 

 






#120 牛獣医の修行日記 ~牛の出産

どうモー、うしコラムです。

今年も猛暑になりそうですね。

日頃、牛にはミネラルとアルカリ成分補充のための岩塩をなめさせているのですが、私のいる牧場ではいよいよ人間にも塩分補充のタブレットが配布されるようになりました。皆様も熱中症にはお気を付けください。

 

さて、今回は牛獣医として牛の分娩に立ち会う時のお話を。

 

牛の繁殖事情

牛は馬や猫と違って特定の発情シーズンをもたない「周年繁殖動物」です。

なので、季節を問わず毎月繁殖活動は可能で、そのため牛が12頭いれば毎月1頭ずつ分娩させるといった分配も可能です。

野菜と違って肉は「秋に実る(=秋しか採れない)」みたいなことはないですよね。牛だけでなく、豚も鶏も周年繁殖動物の性質を利用して、年中(基本的には)均等に生産されているわけです。

 

というわけで、牛獣医は1年中、頭の片隅に分娩への心配を抱えています。

 

分娩は大変!

分娩に危険はつきもので、胎子が母牛の産道を通れない、なんてこともよくあるんですよ。

牛は脚が長い動物なので、例えば両脚が真っ直ぐ産道に通らないと脚がつかえて通れなくなってしまい、頭だけが出て止まってしまっているとか。

そんなときは人間の手で、一旦頭を押し込めて、両脚を正しい位置に戻してから引っ張り出します。

 

しかし引っ張り出せれば簡単なほうで、なかには胎子が大きすぎてどうしても産道を通らないということもあります。

そんな時は帝王切開。母牛のお腹を切って子牛を取り出すのです!

 

介助にしろ手術にしろ、何が大変って、牛がとにかくでかいこと。

難産になる場合、子牛は体重50kgにもなることがあるのですが、それを人間の手で支え引っ張り出すのは想像以上にハードワーク。

1例やりおわると、もう店じまいして帰りたいと思うほどクタクタです(笑)。

 

分娩後のべろべろ事件

しかし状況はそんなのお構いなし。「他の牛の診察もお願いしまーす」

へ~い…とよれよれの足取りで牛群に入った時にその事件は起こった。

静かに牛が集まってきて、気が付けば牛に取り囲まれている…

 

分娩仕事のときは大抵羊水をかぶったり胎子を抱き上げたりして子牛の匂いが体に染みついています。

それが牛たちを刺激したのか…

「あらー、でかい子ねぇ」

「お母さん、どこ?」

「代わりに舐めてあげるわー」

とでも言っているのか、牛たちに、びっしゃびしゃになるほど体を舐め回されたのでした。

 

(牛たちへの)モテ期を味わいたかったら、難産へのお立合いをお勧めいたします。