どうモー、うしコラムです。
今年も猛暑になりそうですね。
日頃、牛にはミネラルとアルカリ成分補充のための岩塩をなめさせているのですが、私のいる牧場ではいよいよ人間にも塩分補充のタブレットが配布されるようになりました。皆様も熱中症にはお気を付けください。
さて、今回は牛獣医として牛の分娩に立ち会う時のお話を。
牛の繁殖事情
牛は馬や猫と違って特定の発情シーズンをもたない「周年繁殖動物」です。
なので、季節を問わず毎月繁殖活動は可能で、そのため牛が12頭いれば毎月1頭ずつ分娩させるといった分配も可能です。
野菜と違って肉は「秋に実る(=秋しか採れない)」みたいなことはないですよね。牛だけでなく、豚も鶏も周年繁殖動物の性質を利用して、年中(基本的には)均等に生産されているわけです。
というわけで、牛獣医は1年中、頭の片隅に分娩への心配を抱えています。
分娩は大変!
分娩に危険はつきもので、胎子が母牛の産道を通れない、なんてこともよくあるんですよ。
牛は脚が長い動物なので、例えば両脚が真っ直ぐ産道に通らないと脚がつかえて通れなくなってしまい、頭だけが出て止まってしまっているとか。
そんなときは人間の手で、一旦頭を押し込めて、両脚を正しい位置に戻してから引っ張り出します。
しかし引っ張り出せれば簡単なほうで、なかには胎子が大きすぎてどうしても産道を通らないということもあります。
そんな時は帝王切開。母牛のお腹を切って子牛を取り出すのです!
介助にしろ手術にしろ、何が大変って、牛がとにかくでかいこと。
難産になる場合、子牛は体重50kgにもなることがあるのですが、それを人間の手で支え引っ張り出すのは想像以上にハードワーク。
1例やりおわると、もう店じまいして帰りたいと思うほどクタクタです(笑)。
分娩後のべろべろ事件
しかし状況はそんなのお構いなし。「他の牛の診察もお願いしまーす」
へ~い…とよれよれの足取りで牛群に入った時にその事件は起こった。
静かに牛が集まってきて、気が付けば牛に取り囲まれている…
分娩仕事のときは大抵羊水をかぶったり胎子を抱き上げたりして子牛の匂いが体に染みついています。
それが牛たちを刺激したのか…
「あらー、でかい子ねぇ」
「お母さん、どこ?」
「代わりに舐めてあげるわー」
とでも言っているのか、牛たちに、びっしゃびしゃになるほど体を舐め回されたのでした。
(牛たちへの)モテ期を味わいたかったら、難産へのお立合いをお勧めいたします。