どうモー、うしコラムです。
前回、日本で飼育されている牛の飼料は、飼料安全法や牛海綿状脳症特別措置法 (BSE特措法)を守る義務がある、というお話をしました。
BSE特措法の『BSE』って何でしょう?
今回は『BSE』について詳しくお話します。
BSEは病気の名前
BSE…聞いたことないなぁという人も、今となっては多いかもしれませんが、それはそれで携わってきた方々には誇らしい話。話題にする必要がないぐらい抑え込みに成功したわけですから。
実は日本でも2001年にBSEが1頭の牛で確認され、大きなニュースになったことがあるのです。
BSEとは、Bovine Spongiform Encephalopathy の略 で、日本語訳は「牛海綿状脳症」です。「狂牛病」という名前のほうが有名かもしれません。
これは、プリオンというタンパク質の異常型(異常プリオン)が脳に蓄積し、脳細胞を壊していった結果、脳がスポンジ状になり最終的には死に至る病気。
残念ながら治療法はありません。
たくさんの病気がある中で「BSE特措法」というBSE対策に特化した法律ができた理由。それは、BSEに感染した牛由来の食物を食べた人がそれと同様の病気になる、つまりヒトにも感染すると考えられる事例があるからです。
人にもうつる…しかも治療法がない…。
この恐ろしい事態に対処するため、日本を含む世界中で急ピッチでBSE対策がとられた、というわけです。
では、日本ではどのような対策がとられたのでしょうか?
日本で行われた3つのBSE対策
①飼料を規制する
BSEは、風邪とは違い、感染牛の近くにいるだけではうつりません。
異常プリオンに汚染されたものを食べることで感染します。
昔BSEが広まった原因の一つに、牛由来の肉骨粉が挙げられています。
肉骨粉とは、お肉に処理される過程で出た食用以外の骨や内臓などを加熱処理・乾燥・粉砕したもの。
家畜のエサ、肥料として利用されます。
海外ではかつて、牛にも牛由来の肉骨粉を食べさせていました。その中には、BSE感染牛由来の、異常プリオンで汚染された肉骨粉も混ざっていて、それを食べた牛にBSEが広がっていったと考えられています。
このような背景から、現在、日本を含む多くの国で、牛の肉骨粉を牛に与えるのは禁止されています。
②特定危険部位を除去
牛の体内で、特に異常プリオンが蓄積されやすい場所が分かっており、そこを『特定危険部位』と言います。
と畜場で処理される際、特定危険部位は他としっかり分別・焼却処分することが決められています。
ですので、人間の食品にはもちろん、肉骨粉にも特定危険部位は絶対に含まれていません。
③BSE検査
BSEにかかっていないか、直接的なチェックもしっかり行われています。
BSE発生当初の2001年から2004年までは、と畜場で処理した牛全頭を検査していました。
その後発生状況を考慮の上、検査対象は徐々に緩和され、今は必要がある時のみ検査することとなっています。2009年を最後に、日本では発生例がありません。
これらの対策を徹底した結果、2013年には国際的にも日本の牛肉は安全と認めらるようになりました。
また輸入牛肉についても、日本が定めた対策を遵守する国からしか輸入することはありません。
ですので、安心して牛肉を召し上がってくださいね!
参考資料
1)日本獣医学会 人獣共通感染症 連続講座 第122回(09/24/2001)