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#34 全国和牛能力共進会レポート(2)「もくもく」

どうモー、うしコラムです。

 

全国和牛能力共進会鹿児島大会の様子をお伝えする第2弾です。

鹿児島大会は共進会史上かつてない広さの会場が使われたそうです。ちょっと高いところから見てみると

いやぁ広い。歩きましたー!

参加者数は30万人を超えたそうです。

 

そして肉牛のイベントらしく、あっちでもくもく

こっちでモクモクと、

焼き肉の匂いがあちこちで漂っていました。

 

目玉はなんといっても各県ブランド和牛の試食会。日頃なかなか食べられない様々な高級ブランド和牛を無料で試食できるだけあって大変な賑わいでした。

 

秋田県もお肉をふるまい、この行列!

 

ここでも、はい、じゅー--っモクモク!

 

お客様には秋田牛のPRも欠かせません。接客担当は秋田県職員の獣医さん。まさに官民一丸となったイベントです。

 

試食会終了後には、出展した県同士でお肉の交換試食を行うなど、忙しくも楽しいひと時を過ごしました。

秋田牛も、他県の牛も、おいしかったです!もぐもぐ。

 

 

 

 






#33 全国和牛能力共進会レポート(1)「戦いの結末と過程と」

どうモー、うしコラムです。

この前、私の所属する農場も気温1℃になって、凍えた手を牛のおしりに突っ込んで(直腸検査ですヨ、仕事ですヨ)「あったけぇ…」と思わずほっこり…

 

いやそんなことはともかく。

 

5年に1度の和牛の祭典、全国和牛能力共進会鹿児島大会が先月終了。生産現場では余韻に浸ることなく、次の北海道大会に向けて準備が進んでいることでしょう。

簡単に振り返ってみますと、今回は何といっても鹿児島・宮崎の強さが光った大会でした。各区のトップ3は下表のとおりです。

優等-1席 優等-2席 優等-3席
1区 若雌 鹿児島 大分 岩手
2区 若雌の1 大分 宮崎 鹿児島
3区 若雌の2 宮崎 鹿児島 宮崎
4区 繁殖雌牛 鹿児島 宮崎 北海道
5区 高等登録 鹿児島 宮崎 北海道
6区 総合評価 鹿児島 宮崎 島根
7区 脂肪の質 宮崎 島根 広島
8区 去勢肥育牛 鹿児島 島根 岐阜
特別区 高校・大学 鹿児島 宮崎 岩手

審査では、牛の外観や発育状態のほか、種牛としての能力や産肉能力、肉質などが評価されます。体型は太っていても痩せていてもダメ。理想的な範囲に収まっていることが重要です。

 

共進会では、全国各地から地方予選を勝ち抜いた猛者(猛牛?)が集まります。それなりに素晴らしい体型・肉質の牛ばかりのはずですが、しかしそこは生き物。予選から大会当日までその体型を維持できるとは限りません。

 

動物にとって輸送によるストレスは大きいものです。例えば、下のグラフは6区に参加した秋田の牛と鹿児島の牛の体重を比較したものですが、鹿児島の牛の体重は比較的そろっているのに対し、秋田県の牛は体重が落ち、ばらついてしまいました。(グラフの縦軸は体重)

いかに牛のベストコンディションを保ったままでの長距離移動が難しいかが分かりますね…。

 

 

そこでふと疑問が生じます。

前回の宮城大会、この時鹿児島の牛は、今回とは逆に長距離移動する立場となっていました。しかしそれでも良い成績を納めています。

いったいどうやって?

 

鹿児島の方に伺ってみると

「実は移動中に痩せることを見越して、予めちょっと太めにしておくんですよ」

 

…まさかそんな技があるとは!!

さらっと言われましたが、決して簡単なことではないでしょう。まさに模倣困難のノウハウが蓄積されているのだろうな…と思いました。

 

インタビューに答えてくださった方がおっしゃるには

「大会が終わるまで、スタッフも獣医師も、凄くピリピリしてましたよ(笑)」

 

…実に想像に難くない。

和牛が、各県こうして品質を磨き合ったうえで私たちの手元に届くことを、改めて実感しました。

 

データ出典:

第12回全国和牛能力共進会受賞牛名簿

第12回全国和牛能力共進会出品牛体型測定値






#32 牛と化け物について

どうモー、うしコラムです。

先日ハロウィンがありましたので、ちょっと魔物系のお話。

 

牛は昔から人間の身近にいるためか、神の化身にも魔物の類にもなっていますね。温厚で恵みをもたらすたおやかな姿は神のモチーフとなり、強く荒々しい側面が禍々しいものをきっと連想させたのでしょう。

 

にんべん(イ)に牛と書くと「件(くだん)」という妖怪になります。絶対に外れない予言を残して死ぬ妖怪です。もう「なんのためにそんな生き方を…」と思わずにはいられません。日ごろ使う「例の件、どうなった?」というのは、「件(くだん)が言い残したあの話はその後どうなった?」という意味ですね。

そのほか、地獄の看守は「牛頭(ごず)」といって、文字通り牛の頭をしていますし、いわゆる「鬼」も頭に角があるのは牛がモチーフだからと言われています。鬼の通り道である「鬼門」が「丑寅(うしとら)」の方角にあるのも偶然ではないでしょう。

 

西洋では悪魔と言えば山羊のイメージがあるので、ハロウィンに牛は馴染みませんかね?

いやいや、たまには和のテイストで鬼神の類の仮装を楽しんでみるのもよいのではないでしょうか。例えばこういう…

って、「なまはげ」やないかー-い!(-_-)/

どこまでも秋田県推しのブログですので、おあとがよろしいようで。m(__)m

 






#31 養牛はハイテク産業!?交配適期をつかむテクノロジー

どうモー、うしコラムです。

 

前回、修行日記で牛の発情周期の話をしました。21日間周期の中の1日だけが人工授精のチャンスであると。

そこで疑問が。「そんな微妙なタイミング、どうやってつかむの!?」と思ったアナタ、鋭いです!

 

実は多くの動物で交配適期は、メスの腰骨の上にオスが乗っかって、メスがおとなしくしていればアタリ、暴れればハズレ、というふうに見極めできます。養豚の場合だと、例えば従業員が雌豚の腰骨に座り、

・おとなしくしているようなら交配適期

・振り落とされれば、まだダメ

という要領で交配可能の豚を見つけることもあるんですね。

 

牛の場合、発情が来るとメス牛同士で乗ったり乗られたり、といった行動をするので、それを見つけたら「キターーー!(; ・`д・´)」と人工授精師を呼び…

 

いや待て待て。

牧場が広かったら、それをいちいち見つけるのって大変じゃない?と気付いたアナタ、ほんとにその通りです。

 

以前はそこで苦労があったようですが、しかし今は心強い味方がいる。

なんと!首につけたセンサーが発情時期を見極めるんです!

 

発情が来ると歩数が上がったり、首を振る回数が増えたりするので、そのような兆候をウェアラブルデバイスのセンサーが感知するという、まさかのICT化。

 

豚の繁殖のイメージしかなかった私は、「牛にセンサーがつく時代か…」と驚いたものですが、今はそれどころではありません。

 

牧場のDX化を推進する企業・株式会社ファームノートの方に伺ってみると

「単純に何歩以上歩いているから発情というのではなくて、AI(人工知能)がいつもと違う動きを感知して知らせてくれる仕組みです」

…す…すげぇ…グラフの黄色い部分が発情をつかんだところですね…

 

まるで牛との対話を可能にしてくれるようなテクノロジー。

近年いろんな企業がこの分野に参画していて、今後どんな進化をするのかとても楽しみですね!

 

余談ですが、先日の全国和牛能力共進会でもファームノート社は大きなブースを出して注目を浴びていました。

 

ITの力で畜産業も盛り上がりますように!

 

写真提供:株式会社ファームノート

 






#30 牛獣医の修行日記(5)

どうモー、うしコラムです。

いよいよ朝晩涼しくなってきましたねー。しかし日中は暑く、気温差で牛がまいってしまう時期です。

そう、気温差ってすごいストレスなんですよね。人間も体調を崩しやすい季節です。皆様、美味しいお肉を食べてご自愛ください!(宣伝!)

 

さて、牛の臨床、というか繁殖を始めてその後どうなったかという話。

人工授精や受精卵移植を行うには、管の中にある竹輪の穴に手探りで鉛筆を突っ込む技(何言ってんだ、という人は#23を見てね!)を覚えなければならないという話をしました。

この技を覚えんとしてトライするのですが、しばらくは壁をつつくばかりで、師匠から「ハイ時間切れー!」と言われて凹む日々。

しかし不思議なもので、ある時、何かの拍子に「…スコン…」と壁を通り抜ける感触がしたのです。

これってもしかして…?

師匠が確認して、「はいオッケー」と言われ、ガッツポーズ!

 

一旦自力で「竹輪の穴通し」の感触をつかむと、だんだん成功率も上がっていき、ほっとひと安心。…

と思いきや、そうはいかない。結局受胎するかどうかが重要です。

人工授精は通常、牛の発情期をつかみ、そのタイミングで行います。牛の発情周期はおよそ21日で、受胎できるのは発情している1日だけです。つまり3週間後に再び発情兆候が見られたら人工授精は失敗だったことになります。

 

そして、まぁ、

 

来ちゃうんですねー、発情が…3週間前授精した牛に…ううーーん…

 

5月、私が担当した人工授精は全く受胎せず。

「最初の2か月は全く着かないんだ、これがさー」とは言われていたのですが、とはいえ、やはりショックでした。こんなにもうまくいかないものだとは。

 

しかし毎日授精作業はやってくる!お願い、受胎して!!

続く!!

 






#29 全国和牛能力共進会に行ってきました!

どうモー、うしコラムです。

 

今回は取り急ぎご報告。

先日、鹿児島で行われた全国和牛能力共進会に2日間行ってきました!

 

いやー、広い会場で歩いた歩いた!(;´▽`A“

牛の評価会場には厳しい人数制限があり、残念ながら直接審査の様子を見ることはできなかったので、外のモニターやライブ配信で固唾を飲んで見守っていました。

秋田県は大健闘するも、惜しくも入賞を逃しました。しかし全国の強豪相手に本当に大変だったと思います。携われた皆様に、牛たちに、心から拍手!!!

 

現場の詳しい様子は後日配信いたします。お楽しみに(^^)/!






#28 戦国の世から名を遺す秋田の「牛」!?

どうモー、うしコラムです。

 

ちょっと今日は異色な、戦国時代の秋田の牛のお話を。

 

唐突ですが、2022年10月現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、面白いですね!

脚本家・三谷幸喜氏の大河ドラマは「鎌倉殿」で3作目。今回は鎌倉近辺がその影響で盛り上がっていることでしょう。

2作目の大河ドラマ「真田丸」(2016年)も大人気でしたね。放送当時、ドラマの舞台となった長野県…から遠くはなれた秋田県でも観光客が3倍増したそうです。って何故!?

実は「真田丸」の主人公・真田幸村の娘の嫁ぎ先が秋田のお殿様佐竹氏だったから、ということだそうで。

そこにくっつくように牛のエピソード。実は秋田初代藩主・佐竹義宜に仕えた鷹匠に浅利牛欄という人がいたそうです。…ほら、「牛」の字がついているじゃない(汗)。

 

しかしこの浅利牛欄、秋田にとっては重要人物。

秋田県には「横手鷹」と呼ばれる日本屈指の鷹画の流派があるのですが、実はその開祖と言われているのが、誰あろう浅利牛欄!

元々は武士だった浅利牛欄ですが、鷹画の絵師としても活躍し、秋田の芸術史にその名を残すことになったのです。

 

秋田の芸術と「牛」との微妙な接点にちょっと驚いて、ご紹介した次第でした!

 

 






#27 牛獣医の修行日記(4)

どうモー、うしコラムです。

 

すっかり秋の空になりましたね。日中の暑さも少し和らいできたように思います。

 

今年の夏も暑かったですね…牛が熱中症になって、その対応に追われる毎日でした。

 

牛は暑さに弱い動物です。牛は4つの胃を持っていますが、そのうち最も大きい第1胃は食べた物の発酵槽になっていて、それが大体39℃前後の発酵熱を発しています。体の中に湯たんぽを持っている状態なので、どうやら外気が暑いとこたえるようですね。

 

加えて牛の体毛は結構ふさふさのフカフカで、触っていると気持ちがいいのですが、イヤこれは夏は暑そうだな…と思わずにはいられません。

 

というわけで、牛の適温域はかなり低めで、繁殖用の成牛で10~15度、哺乳中の子牛でも13~25℃と言われています。うーん、日本の夏だとこれは難しいですね…。

 

暑くなると、母牛だと受胎率が下がってしまうし、子牛も体調が悪くなるし、熱中症で死に至ることもあります。本当に侮れません!…お陰様で子牛に点滴するのも上手になりました…。

 

さて、前回人工授精や受精卵移植が難しい!という話をしましたが、そう、たどたどしい繁殖作業をやりながらこの厳しい夏を迎えることになりました。果たして暑さを乗り越えることができたのか!?

ホントに結果が怖いです(笑←笑えないけど)。

続く!






#26 お米と牛のうまい関係

どうモー、うしコラムです。

 

前回、全国和牛能力共進会で秋田牛の脂が評価されたらうれしい、というお話を書きました。今回はそこを少し詳しくお話しします。

 

脂…つまり「脂肪」はお肉のうまみに直結する重要な要素ですが、この脂肪というやつが結構複雑で。

中学の理科を思い出していただきたいのですが、脂肪というのは脂肪さんと脂肪君…もとい脂肪酸とグリセリンという成分がくっついてできています。この脂肪酸が脂肪の性質を左右する要素です。

脂肪酸にはいろんな種類があり、その中でもオレイン酸は溶ける温度(融点)が16度ぐらいで、くちどけ・舌触りに直結する脂肪酸なんですね。脂肪の成分の中でオレイン酸の割合が高くなると、くちどけが良く風味が良くなるわけです。

 

牛の体の中でどんな脂肪ができるかは、食べたものによって変わってきます。脂肪の原料は主に「でんぷん」です。でんぷん自体は脂肪ではなく炭水化物ですが、体の中で脂肪に変えられてしまいます。誰でも炭水化物の取りすぎで脇腹あたりが…というのは覚えがあると思いますが、それと同じで。

牛の餌は牧草がメインで、一部に配合飼料と呼ばれるでんぷんを多く含む飼料を与えます。でんぷんの源は主にトウモロコシですが、秋田牛の場合、その一部に秋田で取れたお米が使われているのです。

お米を食べると、どうやらトウモロコシを主に食べた場合と比べてオレイン酸の割合が高くなる、ということが近年の調査で分かってきました。

 

飼料に使うお米は飼料米といって、専用のお米を使います。これも品種がたくさんあって、秋田では「秋田63号」(強そう!)「たわわっこ」などなど使われているそうです。

 

秋田牛はまさに秋田のお米農家と畜産農家の珠玉の合作と言えるわけですね!

 

出典:

農林水産省「飼料米をめぐる情勢について

農林水産省「飼料用米の活用による特色ある肉用牛産地の育成

農研機構「飼料用米の肉牛への給与技術






#25 全国和牛能力共進会へ!

どうモー、うしコラムです。

 

来月、10月6~10日は鹿児島で「全国和牛能力共進会」が行われます。(#16も見てね!)

 

全国和牛能力共進会は、「和牛オリンピック」とも呼ばれる和牛の品評会です。5年に1度、日本全国から優秀な和牛を集め、改良の成果やその優秀さを競います。

 

さあ、8月は全国各地で次々と代表牛が決まり、いよいよ!という雰囲気が漂ってきました。今回は41道府県が参加です。

大会は「種牛の部」「肉牛の部」「高校及び農業大学校の部」の3部門9区に分かれて行われます。秋田県からはそのうち6つの区、合計14頭の出品が決まりました。

 

その6つの区での全ての成績が気になりますが、やっぱり第7区「脂肪の質評価」は注目ですね!秋田牛は秋田のお米を食べて育ちますが、その成果は脂に出ると言われています。おいしい脂が評価されてほしいなぁ~~~~!

 

8月21日には壮行会が行われ、今まさに秋田県は盛り上がっています!