どうモー、うしコラムです。
朝晩かじかんでいた手先足先の痛みがだんだん和らいでいくと、いよいよ春が近いと感じますね。
痛みつながりで、今回は牛獣医をやっていて痛かった話を少し。
蹴り!
野生の牛のキック力は、場合によってはライオンを殺すほどの威力があるそうですが、獣医は牛が嫌がること(注射とかお尻に手を突っ込むとか)をする以上、それを食らうことを覚悟しなければなりません。
牛に注射をするときはお尻の周りにすることがあるのですが、よりにもよってその時は暴れ牛でした。
刺した瞬間、牛は飛び上がり、そのまま強烈なキックを私の膝に!
みしっ
と何かがきしむ音。
やばい、これは大腿骨がやられた…っ
と思ったらさほど痛くない(いや痛いのは間違いないのですが)。
よく見ると、蹴られたあたりには作業服のポケットがあり、そこには私の業務用スマートフォンがあったのです。
みしっといったのは、スマホが凹む音でした。
現在も若干「へ」の字になったスマホを使いながら、牛ってこえぇなあと思うと同時に、スマホってちょっとやそっとじゃ壊れないのねと感心するのでした。
頭突き!
絵本や映画なんかで、大きな動物に服を咥えられて背中にひょいと乗せられる場面があって、憧れたりしたものです。
牛が相手だと、さほど平和的ではありません。
それは甘えているのか邪魔だと言っているのか、とにかく牛は隙あらばスリスリと頭をなすりつけてくる。
いや、牛はスリスリのつもりかもしれませんが、実際の肌感覚としてはゴリゴリゴリ!といったところで、これをお尻・腰・背中に食らうと本当に痛い!
更に強靭な首の一振りが当たれば、人間なんか軽く吹っ飛ぶのです。
さて、直腸検査の作業中、私の背後を狙う牛がひたひたと近づいてくる。
そして何度も続く頭突きゴリゴリ攻撃に耐えていると、その牛は私の股に頭を突っ込み
ぶぅーーーーん
と首を持ち上げたのです。
私はふわーっと浮き上がり、…
…まあ、ちょっと気持ちよかったです。直腸検査中にやられると肩が脱臼するので、お気をつけて。
圧!
搾乳牛だと体重が600㎏ほどもあるのですが、牛と牛との間に割り込もうとして両方の牛の腰骨にプレスされたり、発情した牛にのし掛かられたりと、重量だけで十分な凶器です。
一度、治療中に牛が倒れ、そのまま私も巻き込まれたことがありました。
しっかり乗られてしまうと、本当に脱出できません。この時ばかりは自分の死か、立てなくなるかを意識しました。
こんな時って、映画さながら「誰か――っ!」と叫ぶものですね。幸い人がいてくれたので、救助されて事なきを得ました。
牛に携わる者、安全確保が第一です。
皆様も、牛と接触するときはお気をつけて。