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#71 獣医の修行日記 妖怪四変その2

どうモー、うしコラムです。

 

さて、4つある牛の胃のうち、4番目の胃にガスがたまって体の右側もしくは左側に移動してしまう病気・第4胃変位(=妖怪四変)に遭遇したらどうしよう、というお話の続き。

 

その日は突然やってくる

おや、最近餌を食べたり食べなかったり…安定しないなぁ…という牛が、ある日突然現れる。

 

実はそれこそが、妖怪四変に取りつかれたサイン。

もしやと思って聴診してみると…第4胃変位!

 

診断は意外と難しいのですが、ざっくりいうと、打診してみてキンキンという金属っぽい音が聞こえたら第4胃変位の可能性大、というわけです。

 

牧場スタッフ「どうします?」

私「と…とりあえず内科的治療で様子を見ましょうか」

で消化管を動かす薬を使ってみるのですが、治らない。

 

牧場スタッフ「どうします?」

私「えー…先輩獣医に電話します」

とプライドもへったくれもないやり取りの後、地域の先輩獣医師に頼み込んで手術を教えてもらうことに。

 

牛をやっている限り、その日は必ずやってくる。むしろやっと来たといったところ。

妖怪四変、見事退治してみせよう!(先輩の手で)

 

退魔術展開(※手術です)

一通り手術の準備をすると

先輩「じゃあ麻酔しようか」

でスタート。切る部分を半分囲うように麻酔を注射。

私「ホントに切るんですか?」

先輩「何のために麻酔したのさ?」

ですよねー…で意を決してざくりと切る。

 

私「この瞬間が痛そうでイヤです」

先輩「慣れるしかないね、はい、筋層も切って」

そして腹壁も切って、とうとう消化管が見えるようになる。

 

私「とうとうここまできた…」

先輩「いやまだまだ序の口だから」

 

そんなこんなで4胃を探っていくと、パンパンに膨らんだ袋が触れる。

 

触れる、というのは、切開部分の大きさに対して腹がでかすぎて4胃を見ることはできないので、手探りするしかない、ということ。

 

私「これ、4胃すか?」

先輩「(手を入れながら)うん、正解。じゃあガスを抜こうか」

私「(ゴクリ)こ…こんなデカいもの、どうやって…」

 

そして先輩獣医は不敵に笑って、おもむろに秘密の退魔兵器を取り出すのだった。

続く!

 

 






#70 初夢

どうモー、うしコラムです。

新年明けましておめでとうございます。

今年の初夢はいかがでしたか?

縁起が良い初夢として「一富士、二鷹、三茄子」とよく聞きますね。

これは江戸時代から伝わる言葉で由来は諸説あるそうですが、当時将軍であった徳川家康に縁の深い駿河の国(現在の静岡県)の名物を並べたという説が有力だそうです。

また「富士」は「無事」「不死」、「鷹」は「高」「貴」、「茄子」は「成す」が連想され、不老長寿や出世、成就を表わすとも言われています。

ちなみに夢占いにおいて牛は、豊かさや財産を象徴しているそうですよ。

ただ牛の夢の運気は継続性に欠けることが多く、長く続かないそうで(笑)。

 

山と牛

富士山が出てきたので、山と牛に関する話を1つ。

高原での養牛は各地で行われているんですよ。

熊本県の阿蘇山麓、鳥取県の大山、岡山県の蒜山高原、栃木県の那須高原etc.

また、富士山の麓でも富士山牛というブランドで養牛が盛んに行われています。

 

高原での養牛には様々なメリットがあるんですよ。

例えば、高原は稲作や畑作には向きませんが、高温多湿が苦手な牛にとっては快適な環境です。

そして牛に必要な水も豊富!しかも高原は大抵水質がいい。

 

水があって涼しくて広いけど作物を作るには不向きな高原。

養牛はそんな地域をしっかりと支える産業なのです。牛さん有難し!

 

鳥海山の別称は…

ところで、秋田県と山形県の県境にある『鳥海山』は、標高2236mの活火山。

山頂に雪が積もった様子が富士山と似ていることから、秋田県民から出羽富士とも呼ばれています(ちなみに山形県民からは見れば庄内富士)。

 

そしてここの麓では、秋田牛である秋田由利牛が育てられているんですよ。

鳥海山(出羽富士)を背景に悠々と草を食べている秋田由利牛の夢が見られたら…なんだかとっても縁起が良さそうですね!

 

なんて初夢とつながったところで、本年もどうぞよろしくお願いいたします。






#69 十二支

どうモー、うしコラムです。

あっという間に2023年が終わろうとしています。

2024年は「辰年」ですね。

今回は、十二支についてお話しようと思います。

 

十二支と干支は違う

十二支は、皆さんがよく知っている「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」です。

一方、干支は、十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)に十二支を組み合わせたもの。

カレンダーに甲子(きのえね)など書かれているのを見たことがあると思います。

ですので、「干支は辰です」という表現は厳密には間違い。

正しくは、「2024年の十二支は辰」又は「2024年の干支は甲辰(きのえたつ)」なのです!

 

また、十二支は方角や時刻も表すのにも使われています。

例えば、丑(うし)がらみでいくと…

方角では子が北、午が南なので、「丑」は北北東。

時間では「丑」は午前1~3時のことで、「草木も眠る丑三つ時」の「三つ」とは、1~3時を30分刻みで数えて3番目の時間。つまり午前2時~2時半を指します。

 

国によっては「猫年」もある

そもそも十二支の漢字を見ても、動物とは結び付かないですよね。

実はこれらの漢字は、季節ごとに移り変わる植物の様子を表わしているそうです。

では、なぜ私たちは動物を思い浮かべるのか?

所説ありますが、ただ漢字を見て呪文のように唱えても覚えにくい!
何か覚えやすい方法はないかな…そうだ!読み方で連想される動物をあてよう!というのが一説。

だから、残念ながら「丑」は、動物の牛とは全く関係がないんです。

ところで、中国から日本に広まった十二支ですが、実は日本以外でも韓国、タイ、ベトナム、インド、ロシアなど、他の国々にも普及しているんですよ!

これは、中国がシルクロードを通じて広く交易していたからと言われています。

 

面白いのは、国によってあてられた動物が微妙に異なること。

ベトナムの「丑」は水牛、ベトナムやタイ、ベルラーシの「卯」は猫、モンゴルの「寅」は豹、などなど.

来年の「辰」は、イランでは「鯨」に置き換わっているそうです。

 

2024年は甲辰…勢いよく活気あふれる年と言われています。

明るく希望を持って、皆様良いお年をお迎えください。






#68 牛獣医の修行日記 妖怪四変 その1

どうモー、うしコラムです。

いよいよ年の瀬も近くなりました。

今年はいつもよりも暖かく、なんだか変な気候。

そんな変な年を象徴するかのような恐ろしい出来事が、この秋は起こったのです…(小声)。

 

今回は今年の秋、ある牧場を襲った奇々怪々なお話…。

 

転職獣医師の悩み

今年の夏。

とある牧場の獣医師が(いや私のことですが)、頭を抱えていました。

 

彼は会社員獣医師で臨床未経験であったにもかかわらず牧場勤務へのトラバーユを決意し、なんとか繁殖の仕事のまねごとができるようになった時点で、ひとり、牛の群れに放り出されたような状況でした。

そんな彼の悩みは、外科手術に全く自信がないということだったのです。

 

このまま外科ができないままでよいのだろうか?

 

いや良いわけがない。牧場の管理獣医師として手術もできないなどありえない。

 

昨年は全く平和なもので、手術が必要な場面など皆無だったのが更に良くない。全く経験を積む余地がなかったからです。

 

しかし、恐怖の季節は刻一刻と迫っていたのです。

 

妖怪「四変(よんぺん)」がやってくる

正式名称「第4胃変位」、略称4変。

牛には胃袋が4つあり、そのうちのひとつ、第4胃は、通常右でも左でもない中央に位置しています。

しかし何かの拍子に第4胃にガスがたまり、右側もしくは左側に移動してしまうことがあるのです。

すると第4胃がねじれてしまい、そこから先に食べたものが進まない。最悪死んでしまうこともあるというこわーい病気。

直す方法は色々あるが、なんだかんだ言って手術が最も確実です。

 

4変が起きやすいのは分娩後。お腹の中の大きな胎子がいなくなって、その隙間に向かって消化管が動いた拍子に発生してしまうことがよくあります。

なので、季節を問わずいつでも起こる可能性があるのですが、どうも秋に起きやすいというイメージがあるようで、アンケートを取ってみてもこの通り。

 

質問:4変の出やすい季節はいつですか?(独自調査、獣医師に質問)

回答数16とはいえ、こうもダントツの結果になるとは。

 

ともあれこの手術ができるようにならなければならない。

妖怪「四変」、このメスで退治てくれよう!

と自信を持って言えるようになりたい(及び腰)。

 

さあこの秋はどうなったのか!?続く!

 






#67 家畜を病気から守ろう!

どうモー、うしコラムです。

本格的に冬がやってきましたね。

特に朝晩の冷え込みは牧場作業者の大敵。肌がガッサガサになって痛いのなんの。ハンドクリームが手放せません。

ということで今日はお肌がらみの話です。牛のね。

 

海外で流行っている今話題の牛の皮膚病

牛の肌の病気で最近話題なのが「ランピースキン病」。

牛の皮膚にたくさんブツブツができる感染症です。どんな病気かって、写真はコチラから農水省のページへGo!

 

日本にはない病気のためあまり聞かないかもしれませんが、先日の韓国での大発生を受け、日本も警戒モードになっています。

 

この病気はもともとアフリカでのみ発生していたのですが、2012年ごろ中東に拡散。2019年には中国で発生し、今年(2023年)11月にとうとう韓国でも発生が確認されました。※

※出典:農水省 令和5年10月25日

 

発生したら対策は…

しかしこの病気、たかが皮膚のデキモノと侮るなかれ。

致死率こそ高くないですが伝染性が強く、肉牛は痩せていき、乳牛では乳量が落ちる。生産物よりコストのほうが高くなって畜産業は成り立たなくなっていきます。

ワクチンも治療薬もない現状では、感染拡大を防ぐ方法は、感染牛の殺処分しかありません。

その際、同居している動物は、まだ発症していなくても感染の可能性ありとして、もろともに殺処分対象となることもあります。

 

私も2010年、九州で牛・豚に口蹄疫という病気が発生した時に獣医師としてこうした作業に従事したことがありますが…本当に悲しい出来事でした。

 

消毒マットは必ず踏もう!

動物を病気にさせないよう、農業従事者は病原体を農場に持ち込まない努力が必要です。

 

でも、農業従事者でなくても、私たち一人ひとりにもできることはあるんですよ。

 

それは靴底の消毒!!

 

特に国際線のある空港では、靴底を消毒するために、消毒マットが必ず設置されています。

これは、海外の家畜の伝染病を日本に持ち込まないようにするためです。

動物園やふれあい牧場、観光地ではお店の前やホテルなどでも設置されていますね。

「なんかマットが敷いてあるな…濡れてるから避けて通ろう」は絶対ダメですよ!

海外に行かれる方はもちろん、国内の移動であっても、消毒マットがあったら必ず踏んでくださいね!






#66 感謝の気持ちをお肉にのせて

どうモー、うしコラムです。

あっと言う間にもうすぐ12月。

デパートでは、お歳暮特設会場が賑わっていますね。

お歳暮とは、1年の締めくくりに日頃お世話になっている方々に送る品物のことです。

元々は「歳暮周り」という、1年の終わりに挨拶周りと感謝を伝える行事の際に持参していた手土産を「お歳暮」と呼んでいたそうです。

それが便利な世の中になり、直接手渡さなくても郵送してもらえるようになり、遠くの人にでも感謝を伝えられるようになりました。

私も、両親や義両親には毎年送っています、そう牛肉を!

そしてお正月に帰省した際に私含めてみんなでいただきます。そう、実際のところプレゼント・フォー・ミー!(笑)

 

オススメはしゃぶしゃぶです!(個人的)

というのは、おせち料理の濃い味に飽きたなぁという時にさっぱりとした味付けにできるということで。

かまくらミートでは、しゃぶしゃぶ用として秋田牛の「モモ」と「カタ」の2種類がオンラインで購入できます。

カタは赤身と脂身のバランスがちょうど良く、口の中でとろける感覚を楽しめます。

モモはカタに比べて赤身が多いので、お肉を食べたぞ!という満足感を得られますよ。

 

美味しく食べるコツ

贈答用で送った場合、もちろんお肉は冷凍されて運ばれますが、そのお肉を美味しく食べるコツ、それは解凍方法にあります。

お肉のうま味を損なわずに解凍するには、冷蔵庫でじっくり自然解凍させましょう(しゃぶしゃぶ用肉の場合は、調理6時間前くらいに冷蔵庫へ)。ここポイント!

ただし、完全に溶け切ってドリップ(赤い液体)が出てしまうとうま味がドリップに流れ出てしまいますので要注意です。

そして調理する15分程前に冷蔵庫から取り出し、お肉を室温になじませます。

こうすることでお肉に均一に熱が入り、柔らかく仕上がります。

 

他のお肉もあるぜ!

うしコラムなので、牛肉のことばかり書いてしまいましたが、かまくらミートでは「八幡平ポーク」や「大綱ポーク」もオンラインで購入することができますよ。

お肉に感謝を乗せて、大切な方に贈ってみるのはいかがでしょうか?






#65 牛の目

どうモー、うしコラムです。

今年の夏は暑かった…毎年言っているような気がしますが。

そして11月に入っても夏日が続いた、かと思えばいきなり寒くなったりしています。皆様も体調を崩されぬよう気を付けください。m(__)m

 

秋の目玉の風物詩

涼しくなると、だるくて動けなかった夏場の負債を取り返すかのように動き始めるものがあります。

 

先日牛舎で作業をしていると、とても人懐っこく、甘えてくる牛がいます。

私が歩くとどこまでも付いてきます。

いやぁかわいいなあ(*´▽`*)…

 

しかしよく見ると、牛の鼻息が少し荒い。ふーっふーっ。

私の方に顎を乗せて頬ずりをしてくる。そして「ムムッ」という鳴き声が聞こえる。

 

あ、これはやばいやつだ。

 

と思うや否やぐわっと立ち上がって私に乗りかかろうとしてくる!そう、発情!!

 

さすがに私も600㎏の牛を背負えるほど頑丈ではないので、とにかく退散。

甘えのつもりの頭突きを急所に食らうこともあるので、本当に気が抜けない。

この時期は夏場暑くて発情兆候の見られなかった牛たちが、わらわらと復活してくる時期でもあるのです。

 

牛の目=cow’s eyeとbull’s eye

こんな感じで牛舎に入るやビシビシと牛の熱い視線を受けている今日この頃ですが、「牛の目」の英訳「cow’s eye」には納得の意味があります。上の話から何となく想像つきますか?

 

実は、「色目を使う」「(女性から男性に向けられる)うっとりした目つき」という意味があるのです。

 

牛にじゃれつかれている様子を英語圏の方に見られると、「まさにcow’s eyeだねぇ」なんて言われたりします。

いやリアルなcow’s eyeはありがたくもなんともないのですが(^^;)。

 

ちなみに、雄牛の目=bull’s eyeだとどうなるか?

これはいわゆるダーツの的の中心点、「標的」という意味になります。

そこから「急所」という意味も派生し、「hit the bull’s eye」で「急所を突く」という意味になるそうです。

 

つまり私なんかはcow’s eyeを寄せられてbull’s eyeを突かれていたというわけで。

 

今日も牛の行動から目が離せない1日になりそうです。m(__)m






#64 勤労感謝の日

どうモー、うしコラムです。

11月23日は「勤労感謝の日」ですね。

国民の祝日に関する法律では、「勤労を尊び、生産を祝い、国民互いに感謝しあう日」とされています。

 

世の中には無限に仕事があります。

 

目の前にあるパソコン1つをとっても、部品を作る人、組み立てる人、運ぶ人、売る人、電気を供給してくれる人、インターネット関連の人…こうしたコラムを書くにも、たくさんの人とのつながりを感じずにはいられません。

 

今回は、牛肉がお店に並ぶまでにどんな人が関わっているのか、あらためて考えてみました。

 

大事な命を、多くの人の手で大切に育てます

 

牛の生産現場って、子牛を産むことを専門とする繁殖農家と、子牛を肉牛として出荷するまで育てる肥育農家に分かれていることが多いんですよ。

 

繁殖農家は母牛を飼っており、母牛から産まれた子牛を9カ月齢くらいまで育てます。

 

そして子牛のセリに出して肥育農家に購入してもらい、30カ月齢くらいまで育てて出荷します。

 

この一連の流れで出てきたのが、繁殖農家、セリを運営する組織、肥育農家。

 

更に、牛を飼うために必要な飼料や敷料(滑らないよう床に敷くもの)を作る人や運ぶ人、病気を診る獣医師、牛が一定の月齢に達した時に行う予防接種を仕切ってくれる役場の人…。

 

もっと細かく見ると、牛用の薬を作る人・運ぶ人、牛舎を作る人、牛舎の材料を作る人・運ぶ人、もちろん電気や水も必要だからそれらに関連する人も…。

 

牛を育てるのに関わっている人、もっともっと出てきそうですね!

 

命が食べ物に変わっても

 

肥育された牛は、と畜場に運ばれ、枝肉になり、卸売業者や仲卸業者を介して小売店(スーパーなど)に並びます。

 

ここで出てくるのは、と畜場で働く人、枝肉やもっと小さくカットされた肉を運ぶ人、卸業者、仲卸業者、小売店の人。

 

更に、と畜場の衛生管理を指導する公務員、施設を作る人、施設の材料を作る人、電気・水道関連の人、施設のメンテナンスや警備をする人…。

 

挙げたらキリがありませんね。

 

改めて並べてみると、お肉がテーブルに乗るまでに、本当にたくさんの人々によるドラマが隠れているんだなぁと思います。

 

一見、自分とは関係ないと思う仕事も、どこかで自分の生活を支えてくれています。

 

同じように、自分の仕事はどこかで誰かの役に立っているはず。

 

国民互いに感謝する…とっても素敵な祝日だな、と改めて感じました。






#63 牛は毛までも尊い

どうモー、うしコラムです。

冬物のコートを全部クリーニングに出したつもりだったのに、1着だけ出していないことに気付きました。

さてどうしよう。このまま気付かなかったことにして今冬を迎えるか、それともクリーニングに出すか…。

その点、牛はいいよね、服着ていないんだからそんな悩みなくて。

いやいや、服こそ着ないものの、牛さんだってちゃーんと暑さ、寒さに対応した毛を身に纏っているんですよ。

今回は、牛の「毛」のお話です。

 

牛の毛も生え変わる

遠目では変化のないように感じますが、近くで観察すると、牛の毛は冬と夏で明らかに違います。

冬には『冬毛』と言って、ふわふわの長めの毛が生えてきます。
触り心地はぬいぐるみ。

これがまた温かい!

体感では自分が身に着けているヒートテック以上。

私も冬は、よく牛に抱き着いて暖を取ります。

そして冬を越し暖かくなると、冬毛は抜け、短くて硬い毛になるのです。

この毛が抜ける時期にブラッシングをしてあげると、それはもう気持ちよいくらいに毛が抜けます。

祭りで売っている大きな綿あめができそうなくらい!

これはきっと本人(牛)も気持ちいいはずです!

 

牛の毛玉は縁起物

ところで、牛の毛玉が縁起物として祭られている場所があるのをご存じですか?

それは、兵庫県香美町小代区東垣にある大日堂。和牛の起源と言われている但馬牛の産地です。

ここでは、毎年1月28日に牛の安産祈願を願う大日祭りが開催されます。

年に一度、この日だけ御開帳される大日如来の前には、直径3㎝ほどの茶色の丸い牛の毛玉が、木箱に入って祭られているそうですよ。

昔は、牛舎に牛の毛玉が転がっていたら幸運が訪れる、と言われていたそうですが、これは滅多にお目にかかれないまさにレアもの。もちろん、私もまだ見たことがありません。猫の毛玉ならあるのにね。

毛までも縁起物になる牛さん、尊いなぁ。






#62 BSE

どうモー、うしコラムです。

前回、日本で飼育されている牛の飼料は、飼料安全法や牛海綿状脳症特別措置法 (BSE特措法)を守る義務がある、というお話をしました。

BSE特措法の『BSE』って何でしょう?

今回は『BSE』について詳しくお話します。

 

BSEは病気の名前

BSE…聞いたことないなぁという人も、今となっては多いかもしれませんが、それはそれで携わってきた方々には誇らしい話。話題にする必要がないぐらい抑え込みに成功したわけですから。

実は日本でも2001年にBSEが1頭の牛で確認され、大きなニュースになったことがあるのです。

 

BSEとは、Bovine Spongiform Encephalopathy の略 で、日本語訳は「牛海綿状脳症」です。「狂牛病」という名前のほうが有名かもしれません。

これは、プリオンというタンパク質の異常型(異常プリオン)が脳に蓄積し、脳細胞を壊していった結果、脳がスポンジ状になり最終的には死に至る病気。

残念ながら治療法はありません。

たくさんの病気がある中で「BSE特措法」というBSE対策に特化した法律ができた理由。それは、BSEに感染した牛由来の食物を食べた人がそれと同様の病気になる、つまりヒトにも感染すると考えられる事例があるからです。

 

人にもうつる…しかも治療法がない…。

 

この恐ろしい事態に対処するため、日本を含む世界中で急ピッチでBSE対策がとられた、というわけです。

では、日本ではどのような対策がとられたのでしょうか?

 

日本で行われた3つのBSE対策

①飼料を規制する

BSEは、風邪とは違い、感染牛の近くにいるだけではうつりません。

異常プリオンに汚染されたものを食べることで感染します。

 

昔BSEが広まった原因の一つに、牛由来の肉骨粉が挙げられています。

肉骨粉とは、お肉に処理される過程で出た食用以外の骨や内臓などを加熱処理・乾燥・粉砕したもの。

家畜のエサ、肥料として利用されます。

海外ではかつて、牛にも牛由来の肉骨粉を食べさせていました。その中には、BSE感染牛由来の、異常プリオンで汚染された肉骨粉も混ざっていて、それを食べた牛にBSEが広がっていったと考えられています。

 

このような背景から、現在、日本を含む多くの国で、牛の肉骨粉を牛に与えるのは禁止されています。

 

②特定危険部位を除去

牛の体内で、特に異常プリオンが蓄積されやすい場所が分かっており、そこを『特定危険部位』と言います。

と畜場で処理される際、特定危険部位は他としっかり分別・焼却処分することが決められています。

ですので、人間の食品にはもちろん、肉骨粉にも特定危険部位は絶対に含まれていません。

 

③BSE検査

BSEにかかっていないか、直接的なチェックもしっかり行われています。

BSE発生当初の2001年から2004年までは、と畜場で処理した牛全頭を検査していました。

その後発生状況を考慮の上、検査対象は徐々に緩和され、今は必要がある時のみ検査することとなっています。2009年を最後に、日本では発生例がありません。

これらの対策を徹底した結果、2013年には国際的にも日本の牛肉は安全と認めらるようになりました。

また輸入牛肉についても、日本が定めた対策を遵守する国からしか輸入することはありません。

ですので、安心して牛肉を召し上がってくださいね!

 

参考資料

1)日本獣医学会 人獣共通感染症 連続講座 第122回(09/24/2001)

2)農林水産省HP 牛海綿状脳症(BSE)関連